消費税はどちらがお得か?原則課税と簡易課税の比較
みなさん、こんにちは!
大阪府吹田市で会計事務所を運営している、近藤会計事務所の近藤です。
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナーの資格を元に日々奮闘しています。
消費税について原則課税か簡易課税かどっちがお得なの?
こういった相談をお客様から受ける事があります。
どちらがお得になるかどうかははっきり申し上げるとケースバイケースです。
簡単な事例を交えながら、どちらがお得になるのか?
原則課税と簡易課税の留意点も交えながら分かりやすく説明します。
消費税の原則課税による算定方法
消費税の原則課税とは
実際に受け取った消費税から、実際に支払った消費税を控除して納税額を算定する方法
です。
小売業を営んでおり、8000円(税抜)で仕入れたものを、10000円(税抜)で販売した場合には
受け取った消費税は、10000円×8%=800円
支払った消費税は、8000円×8%=640円
となります。
原則法では
納税額は、800円-640円=160円
となります。
消費税の簡易課税による算定方法
消費税の簡易課税とは
実際に受け取った消費税に一定の割合(1-みなし仕入率)を乗じて納税額を算定する方法
です。
みなし仕入率は、国税庁が決めており、小売業であれば80%となっています。
原則課税と同様に小売業を営んでおり、8000円(税抜)で仕入れたものを、10000円(税抜)で販売した場合には
受け取った消費税は、10000円×8%=800円
納税額は、800円×(1-80%)=160円
となります。
このケースだと、原則課税も簡易課税も納税額が変わらないですね。
少しケースを変えて小売業ではなくて卸売業だとどうなるのでしょうか。
卸売業のみなし仕入率は90%なので
納税額は、800円×(1-90%)=80円
となります。
卸売業の場合は、実際の原価率を80%と仮定すれば、簡易課税を適用する方が納税額が80円(160円-80円)低くなる事がわかりました。
原則課税と簡易課税の比較で最初にすべきこと
このように消費税の原則課税と簡易課税のどちらが納税額を抑える事が出来るのかを判断するためには、最初にあなたが行っている事業が簡易課税のどのパーセンテージが適用されるのがを把握する事が必要です。
みなし仕入率が高ければ高い業種ほど、簡易課税を適用した方がお得になる可能性が高くなります。
なお、簡易課税を適用するためには
- 納税地を所轄する税務署長に原則として適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに提出
- 基準期間の課税売上高が5000万円以下
といった要件がありますので、ご留意ください。
原則課税と簡易課税の比較で考慮すべき項目
次に、原則課税にするのか簡易課税にするのか判断する際に考慮して欲しい一般的な項目を4つ紹介します。
- 輸出売上があるかどうか
- 2年以内に大きな設備投資や車の購入があるかどうか
- 給与の支払いがあるかどうか
- 保険料、租税公課の支払いがあるかどうか
単純にみなし仕入率だけで判断してしまうと、消費税を多く納税する可能性があるので、忙しくとも上記4つの項目は考慮する事をおすすめします。
それでは、順番に見ていきましょう。
輸出売上があるかどうか
輸出売上は税務上において、消費税がかかりません。
卸売業を営んでおり、8000円(税抜)で仕入れたものを、10000円(税抜)で輸出販売した場合には
(原則課税)
△640円(還付額)=(0円×8%)-(8000円×8%)
(簡易課税)
0円=(0円×8%)×(1-90%)
となります。
原則課税であれば、640円の還付を受ける事が出来ますが、簡易課税では還付を受ける事が出来ません。
このように輸出売上がある場合は、原則課税がお得になる可能性がありますので留意しましょう。
2年以内に大きな設備投資や車の購入があるかどうか
2年以内に大きな設備投資や車の購入があれば、原則課税がお得になるケースがあります。
その理由は、簡易課税を適用するためには、届出をしなければならず、一旦届出を行うと2年間は簡易課税を続けないといけない決まりになっているためです。
例えば今年は車を購入しないが、来年車を購入するケースを考えてみます。
卸売業を営んでおり
今年:8000円(税抜)で仕入れたものを、10000円(税抜)で販売
来年:8000円(税抜)で仕入れたものを、10000円(税抜)で販売+4000円(税抜)で車の購入
(原則課税)
今年の納税額160円
来年の還付額160円
となり、2年間トータルで納税額が0円になります。
(簡易課税)
今年の納税額80円
来年の納税額80円
となり、2年間トータルで納税額が160円になります。
このため、納税額を2年トータルで考えた場合は原則課税がお得になります。
給与の支払いがあるかどうか
3つ目の考慮項目は従業員に対して給与の支払いがあるかどうかです。
給与には消費税がかかりません。
給与や費用(経費)項目の中でも大きなウエイトを占める可能性が高い項目です。
卸売業を営んでおり、8000円(税抜)で仕入れたものを、10000円(税抜)で販売、給与として1000円(税抜)支払いのケースを考えてみましょう。
(原則課税)
納税額は160円=800円-640円
となります。
費用(経費)総額では増えたにもかかわらず、納税額は変わりません。
(簡易課税)
納税額は80円=800円×(1-90%)
となります。
費用(経費)の中に消費税がかからない項目がどの程度含まれているのかも考慮するようにしましょう。
保険料、租税公課の支払いがあるかどうか
保険料・租税公課も給与と同様に消費税はかかりません。
保険料や租税公課も業種や状況によっては意外と金額がかかる項目です。
費用(経費)の中に消費税がかからない項目がどの程度含まれているのかも考慮するようにしましょう。
消費税はどちらがお得か?原則課税と簡易課税の比較 まとめ
消費税の納税金額の計算方法には2パターンあります。
原則課税と簡易課税の2パターンです。
業種の違いなど、以下について確認したうえで、原則課税と簡易課税のどちらにすべきかを決定しましょう。
- 簡易課税のみなし仕入率がいくらか
- 輸出売上があるかどうか
- 2年以内に大きな設備投資や車の購入があるかどうか
- 給与の支払いがあるかどうか
- 保険料、租税公課の支払いがあるかどうか
原則課税と簡易課税のどちらもほとんど変わらないのであれば、手続や計算の楽さから簡易課税をおすすめします。